文豪谷崎潤一郎の戦争と平和を見つめる秋の特別展
2025年の秋、芦屋市谷崎潤一郎記念館にて、特別展「文豪は戦の間に咲く―谷崎の戦争と平和」が開催されます。この展覧会では、日本文学の巨星、谷崎潤一郎の生涯に焦点を当て、彼の文学活動と日本の戦争、平和にまつわる背景を掘り下げていきます。
谷崎潤一郎は1886年の東京に生まれました。その生い立ちは、当時の日本の政治的な動向と密接に関わっています。明治時代、国は「脱亜入欧」を掲げ、列強国と対等な立場を確立するための努力を続けていました。その過程には、周辺アジア諸国に対する支配も伴っていました。この時期に谷崎が文壇デビューを果たしたのは、1910年に発表した短編小説「刺青」です。
谷崎が登場した背景には、第一次世界大戦という歴史的な潮流がありました。日本はこの戦争に参戦し、戦勝国としての地位を確立しましたが、その影響は文学界にも大きな波及をもたらしました。経済の好転により、近代化が進展し、新しい文化が生まれる中、谷崎もまた作家活動を本格化させ、彼の作品群は多様な社会の変化と共鳴していきました。
代表作「細雪」は、移りゆく時代背景を反映した新しい中産市民の日常を描いています。この作品は、第一次大戦後、家族の日常における幸せと安寧を通じ、日本と世界の変貌を見事に捉えています。物語は、1936年の秋から始まり、1941年春に終わりますが、その背景には日本が第二次世界大戦に突入していく緊迫した時代の影が色濃く残っています。
展覧会では、谷崎の作品だけでなく、当時の社会情勢や文化も併せて紹介される予定です。また、関連イベントとして、学芸員による特別講義も開かれ、谷崎の作品に込められたメッセージや戦争との関わりについて深く掘り下げていきます。この講義は、10月26日(日)14時から開催され、予約制で定員は20名。観覧料のみで参加可能です。
異なる視点から文豪の世界を体験できるこの特別展は、文化を愛する人々にとって見逃せないイベントです。観覧日時は2025年9月13日から12月7日までの期間で、日曜日を含む毎日開館しています。特に、11月の初めの週末は観覧無料となるため、多くの訪問者が集まることが予想されます。特別展を通じて、戦争と平和が交差する文豪の豊かな作品世界を堪能し、心に深く刻む瞬間をぜひ体験してください。
この展覧会をきっかけに、私たちの歴史と文化を再認識する機会となることでしょう。是非、足を運んで、谷崎潤一郎の文学に触れてみてください。