海況予測システム「Phizmo」の技術発表
2026年5月30日、31日、熊本県人吉市で行われた「GI(グリーンインフラ)学会第1回学術大会」において、古野電気株式会社(兵庫県西宮市)が新たに開発した海況予測システム「Phizmo」に関する技術発表を行いました。「Phizmo」は、過去の海洋データの再現のみならず、未来の海況を高解像度で予測する画期的なシステムです。
発表の背景と意義
近年、海洋環境の管理や水産資源の持続的利用、および水域を含むグリーンインフラの運用において、現状把握だけでなく将来を見据えた意思決定の重要性が増しています。従来の海況データは、空間的および時間的解像度が限られているため、沿岸域や特定の海域における詳細な情報としては十分ではありませんでした。この問題を解決するため、古野電気では、高精度の海況を予測するシステムの開発に取り組んできました。
システムの特長
発表では、領域海洋循環モデルを基に、多様なデータ(気象条件、海況、衛星による水温や海面高度など)を活用して、海洋環境を三次元で再現・予測する技術が紹介されました。「Phizmo」は、過去データの再現に加え、将来の海況を高精度で予測できることが大きな特徴です。また、シミュレーション結果と実際の観測データを統合し、精度の高い予測を実現しています。具体的には、NMC法や3次元変分法、ナッジングといった複数のデータ同化手法を用い、アルゴリズムのパラメータを海域ごとに自動的に最適化することで、利用目的に応じた柔軟な解像度設定と高精細な予測を可能にしています。
実績と成果
発表データとして、関東沖の流速・流向データの検討例が挙げられ、一般的な海況データ(水平解像度10km、時間解像度24時間)に対して「Phizmo」は、水平解像度が3km、時間解像度が1時間の高精度なデータを生成できることが示されました。これにより、黒潮や親潮といった大規模な海流に加えて、分岐流や渦などといった複雑な現象の把握が可能になります。さらに、東シナ海の水温予測においても、「Phizmo」の予測が一般的なデータよりも高い精度を示す結果となりました。
未来へ向けての展望
発表を担当した古野電気の村上友梨氏は、海況を高解像度で予測することが、今後海洋利用や環境保全にとって重要であると強調しました。特に沿岸域では、気象や潮流の変化が環境や産業に与える影響が大きく、短時間・局所的な変化を考慮した判断が必要とされています。「Phizmo」を通じて、複雑な環境変化を可視化し、従来は捉えきれなかった現象の理解や、より精密な意思決定に寄与することを目指します。
古野電気は、今後も海の未知なる側面を探求し、海に関わる様々な現場で実用性の高い情報を提供することで、「みえないものをみる技術」の進化を続けていくことを誓っています。技術の向上と展開に注力し、海洋環境の理解と保全に貢献することを目指しており、さらなる発展が期待されます。