炎症と筋力低下
2026-03-23 14:51:50

神戸と大阪の共同研究が示す炎症と筋力低下の関係

神戸と大阪の共同研究が示す炎症と筋力低下の関係



神戸学院大学と大阪工業大学に所属する研究グループが、炎症による筋力低下の仕組みを三次元培養筋モデルを使って明らかにしました。この研究成果は、「Journal of Bioscience and Bioengineering」にも掲載されています。

三次元培養筋モデルとは何か?



私たちの筋肉は、立体的な構造において規則正しく組織されており、腱に引かれて力を発揮していますが、従来の細胞培養は平面上で行われていたため、実際の筋肉の構造を再現することが困難でした。今回の研究で用いられた三次元培養筋は、コラーゲンの内部に筋細胞を立体的に培養し、人工的な腱で固定することで、より実際の筋肉に近い組織を作り出しています。これにより、電気刺激を与えて筋肉が収縮する様子を観察し、その力を数値化することができるのが大きな特徴です。

炎症が筋力に及ぼす影響



この研究では、炎症性物質であるTNF-αを三次元培養筋に作用させたところ、様々な変化が観察されました。具体的には、筋肉の収縮力は72時間で約90%も低下することが確認されました。また、収縮速度の速い筋線維が細くなり、全体の細胞数も減少してしまうことが分かりました。加えて、筋肉の収縮を支える微細な構造、すなわちサルコメアの乱れや、筋肉の硬さが低下することも確認されました。これらは筋肉の成長に必要な遺伝子の発現が低下することに関連しており、特にコラーゲン関連の遺伝子が影響を与えている可能性があります。

この結果から、炎症は単なる筋肉の「やせ」を引き起こすだけでなく、筋肉が力を生み出すための仕組みを多方面から弱めていることが示唆されます。

研究の意義



慢性炎症は、加齢に伴うサルコペニアやがんに伴う体重の減少(がん悪液質)など、多くの健康問題に関連していることが知られています。しかし、これまでその具体的なメカニズムを直接確認できる研究環境は乏しいものでした。今回の研究は、炎症と筋力低下の関係を明確に示し、三次元培養筋モデルの有用性を示しています。

このモデルは、動物を使用せずに筋肉の収縮機能を評価できるため、倫理的な面からも注目されており、今後は筋力低下の原因解明や新たな治療法の開発に期待が寄せられています。

本研究は、兵庫県の「成長産業育成のための研究開発支援事業(応用ステージ研究)」に採択されたプロジェクトの一環として進められました。

論文情報


この研究の詳細は、以下の論文にまとめられています。
Tamura Y, et al. (2025). TNF-α-induced contractile dysfunction in three-dimensional engineered muscle. Journal of Bioscience and Bioengineering. doi: 10.1016/j.jbiosc.2025.12.008

用語解説


  • - 三次元培養筋:筋細胞を立体的に培養し、実際の筋肉に近い構造を再現した研究手法。
  • - TNF-α:炎症が引き起こすタンパク質で、筋力低下に関与。
  • - サルコペニア:加齢に伴う筋肉や筋力の減少で、転倒リスクと関連。

この研究の発展から、未来の治療法や新薬開発へとつながる道筋が期待されています。


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