海洋予測の未来を切り開くAI技術
兵庫県西宮市に本社を置く古野電気株式会社は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)との共同研究により、AI技術を利用した高精度の海況予測モデルを開発しました。この研究は、2025年にオーストリアのウィーンで開催された「European Geosciences Union 2025」において発表され、多くの専門家から注目を集めました。
研究の背景と目的
気象分野ではAIの活用が進んでおり、天気予報の精度が飛躍的に向上しています。しかし、海洋の予測は陸上とは異なる複雑な要素を持っており、現在でも技術的な課題が残されています。古野電気は「みえないものをみる」という事業テーマの下、データ解析技術の向上を目指し、AI技術を駆使した海況予測を進めています。
JAMSTECは、世界的な海洋地球科学の研究機関として知られており、高度な予測モデルの開発において顕著な実績を持っています。この二つの組織が手を組むことにより、新たな海況予測モデルの実現が期待されています。
研究内容
今回のモデルは「10日間先の海況」を予測することを目的としており、従来のAI海況予測では限界があった地球の球面形状をグラフ状に表現する技術を採用しています。この新しいアプローチにより、海洋の水温や流れをより正確に再現できるようになりました。
モデルは二段階のスケールで設計されており、大域的および局所的な情報を同時に処理できます。さらに、大気データも取り入れることで、より現実的な海洋の変動を捉えることに成功しました。これによって、従来のAIモデルでは難しかった細かな構造の認識が可能になりました。
研究の重要性
この研究は、データ駆動型の海況予測技術の発展に寄与するものです。将来的には、さらに詳細で長期的な海洋環境の予測が可能になると期待されています。特に、漁業や航海、さらには気候変動や資源の持続可能な管理において、この技術は重要な役割を果たすことになるでしょう。
古野電気株式会社 技術研究所の木村考伸室長は、「今回の研究により、海洋のデータや技術が新たな地平を切り開いた」とコメントしています。また、産官学の枠を超えて持続可能な海洋社会の実現に貢献する意欲も示されています。
まとめ
古野電気とJAMSTECの協力によって実現したAI海況予測モデルは、海洋環境の未来に大きな希望をもたらす可能性があります。これからも、AI技術を活用した研究が進み、より精度の高い海洋予測が実現することを期待しています。近い将来、我々の生活においても、海の天気予報がより正確かつ迅速になる日が来ることでしょう。